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3−4 半分喰うのが精一杯 -ちっぽけなプライド- (1999年12月)

自分のことを少しでもよく見せたい、と思うのはごく普通の心理であろう。 特に評価実績主義が重視されてきてからは(最近は絶対的評価実績でもなくなってきているところも多いが)、自分の実績をアピールして少しでもよく見せないと給料があがらないのである(笑)。

しかしそれでもやりすぎはよくない。例えば年間生産計画が10,000台の製品があったとしよう。その年は10,012台作った。まあこれは「目標達成」である。しかしこれに対し「目標をはるかに上回る成果である」と工場長が自己申告した。どういうことか?と専務が尋ねたら「私が毎朝機械の点検を指示したので、トラブルを防いで計画が達成できた。この私の指示には最高の評価が与えられるべきだ。」と。

ほとんどの読者は、そりゃまあ実際にやったこととその結果はその通りかもしれんが、客観的に見てその評価は違うんでない?と思うであろう。この節はそのような話題なのである。




2ちゃんねるに、ある日、PF型いすゞジェミニファンの掲示板の内容が引用された。そのURLと内容は以下のようなものである。
コメント:
あの自動車評論家の国沢光弘さんが昔PFでハチロク相手にレースに出ていたそうで,Eメールを出してコメントをいただきました。・・・・・ 以下は国沢さんの原文・・・・

ジェミニでレースやりましたよ。鈴鹿のシルバーカップです。ライバルはハチロクでしたけど、半分くらい喰うのが精一杯でした。やっぱパワーないです。ただ足は凄くキッチリと仕上がりました。残念ながらデータはありません。作った人が亡くなってしまったもので。
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Mitsuhiro Kunisawa
kunisawa@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~kunisawa/
---------------------------------------------
>show1pf - 99/12/04 00:18:11


http://www.geocities.co.jp/MotorCity-Pit/3452/gb1.htm より引用)
ご存知の方がほとんどであろうが、ハチロクとはAE86型カローラレビン/スプリンタートレノのことである。
このメイルから読者はどういう印象を受けるであろうか。 「ライバルはハチロク」というところでは、ハチロク全盛の中に敢えてジェミニで「打倒ハチロク!」と思って挑んだという印象を受ける。次に「半分くらい喰う」は、最下位グリッドからどんどん順位をあげていったが半分くらいが精一杯だった、という印象。「パワーが無い」「足は凄くキッチリ」の2つで、相対的にハンドリングは良好であったことを言っている。つまり「自分の腕とハンドリングマシンのジェミニを駆使して大パワーのハチロクに戦いを挑んだがやはりパワーには勝てなかった」という印象を与えるのだ。

まとめると
  • 敢えて(マイナーな)ジェミニでハチロク軍団に挑んだ
  • ジェミニはパワー不足で最初から不利
  • 腕とハンドリングの良さで戦った
  • 半分は抜き去ったがそれが限界だった
このようなところであろう。追加すれば、「同等のパワーの車なら私はもっと速いのだ」という言外の意思も筆者は感じるのである。


さてPF型ジェミニとはそれほどまでに非力だったのであろうか?当時、筆者はそうは思っていなかったのだが、具体的にノーマルのスペックをAE86と比べてみよう。仮にPFジェミニは4Door、AE86は2Door APEXとした(レース用は空力の関係から3Doorが多かったようであるが)。
車名 PF型 
ジェミニZZ/R(4Door)
AE86型 
スプリンタートレノAPEX(2Door)
サイズ(全長x全幅x全高) 4,235mmx1,570mmx1,365mm 4,205mmx1,625mmx1,335mm
ホイールベース 2,405mm 2,400mm
トレッド前/後 1,315mm/1,320mm 1,355mm/1,345mm
車両重量 995kg(クーペ975kg) 925kg(3Door940kg)
サスペンション形式(前/後) Wウィッシュボーン/3リンク ストラット/4リンク
エンジン形式・種類 G180型 
水冷直列4気筒DOHC(2バルブ)
4A-GEU型 
水冷直列4気筒DOHC(4バルブ)
排気量 1,817cc 1,587cc
最高出力 130ps/6,400rpm 130ps/6,600rpm
最大トルク 16.5kg-m/5,000rpm 15.2kg-m/5,200rpm
パワーウェイトレシオ 7.65kg/ps 7.12kg/ps
トルクウェイトレシオ 60.3kg/kg-m 60.9kg/kg-f
登場 1979.11 1983.5

表1:PF型ジェミニZZ/RとAE86型トレノの比較
ノーマルスペックで比較すると、AE86は同パワーでありながら70kgも軽い。それにトレッドも前で40mmも広い。加えて3年も後の設計である。確かにPF型ジェミニにとっては分が悪い。だが排気量とトルクでは勝っているし、まるで歯が立たない性能差でもないと思われる。もちろんスペックに現れない実際の戦闘力差というものもあるし、レース用ではなおさらであるからからいちがいには言えない。しかし国沢氏は上のメイルでは「パワーが無い」ということが苦戦の主原因で「足はキッチリ仕上がった」と言っている。つまりコーナリング性能については国沢氏は満足していた、ということである。
では実際に国沢氏の言った通りの結果であったのであろうか。これに関してはすぐに匿名掲示板にて明らかにされ参加者の失笑を買うことになった。その反応はoyakata.netにも載っているが、ここでは更に分かりやすく表にしてみることにしよう。これはJAFのWEBページにおける全国内レース結果検索サービスによって分かったものである。

まずは国沢氏が言う鈴鹿のシルバーカップである。国沢氏は確かに1984年のシルバーカップに出場していた。その参加した初のシルバーカップの結果を上記サイトから入手し、クラス・車種別に色分けし清書したのが表2である。薄黄がNS2000クラス、白/緑がNS1600クラスで、そのうち白がAE86、桃がリタイアである。


あらかじめ言っておくが、ジェミニは排気量が1,817ccであるからNS2000クラスとなり、AE86は1,587ccでNS1600クラスである。
’84鈴鹿シルバーカップレース第4戦(NS−1600,2000)
開催日1984年05月06日
開催場所:鈴鹿サーキット(西)
参加台数:20台
順位
車番 ドライバー 車名 形式 タイム 周回数
1 20 池田 正澄 池田自動車レビン
0:16:55.000 10
2 28 平野 一夫 コクピット稲沢(スカイライン)RS
0:16:56.000 10
3 59 黒木 建次 三信喜多村石油AE86
0:17:02.000 10
4 2 和田 久 奥野SPEED84
0:17:03.000 10
5 1 久田 悟 RS加藤トレノ
0:17:11.000 10
6 7 山崎 祥文 RS加藤コスモスレビン
0:17:12.000 10
7 17 増谷 清博 AE86レビン
0:17:12.000 10
8 77 中 信雄 イシダRスナック錦レビン
0:17:21.000 10
9 21 桜井 善範 ス-パースポーツTAKLレビン
0:17:23.000 10
10 9 野瀬 浩一郎 サルーンドマリコAE86
0:17:34.000 10
11 10 隅田 吉宏 MDC POWER AE86
0:17:39.000 10
12 18 峯村 考一 コミスペシャルCR-X
0:17:54.000 10
13 6 中村 芳枝 大江タイヤクワノスプリンター
0:17:54.000 10
14 3 桜森 淳一 岩田オートレビン
0:17:59.000 10
15 55 国沢 光宏 べストカーガイドジェミニ
0:18:05.000 10
16 13 保田 悦雄 保田建築カローラ(TE71)
0:18:21.000 10
17 67 白石 充則 鈴鹿CIVIC−VI
0:18:28.000 10
18 81 新木 洋一 東新鉄建レビン
0:18:32.000 10
19 37 川原 和也 ホンダシビック
0:00:00.000 6

表2:1984年シルバーカップ第4戦結果
ごらんのように、この時には国沢氏は完走18台中15位、しかも後ろにはAE86は1台である。半分食ったどころか、ほぼ全部に食われてしまっている(笑)。よってこのレースは国沢氏が「半分喰った」とするレースではないと思われる。
続く第5戦、第7戦は国沢氏は出場していない。第8戦は2周のみでリタイアしている。そして最終戦の結果が表3である。JAFのページではNS1600クラスとNS2000クラスは別表で表示されるが、それを1つにしてみた。 NS1600クラスの表中で10位が欠損しているがそのままとし、またNS2000クラスは車名が無かったが、その前に開催されたレースの車番と車名から推測して補完している。 このレース以降、国沢氏がシルバーカップに出た、またはPFジェミニに乗った結果は見つからない。国沢氏は1985年はDR30型スカイラインでレースに出ているのである。パワー不足に懲りたのだろうか?(※)

’84鈴鹿シルバーカップ自動車レース最終戦 (NS-1600,2000クラス)
開催日1984年11月25日
開催場所:鈴鹿サーキット
参加台数:29台
順位 参考総合順位 車番 ドライバー 車名 型式 タイム 周回数
1 1 2 和田 久 AE86
0:19:42.000 7
2 2 20 池田 正澄 AE86
0:19:51.000 7
(1) 3 28 平野 一夫 スカイラインRS
0:19:54.000 7
(2) 4 80 巽 隆雄 ロイヤルメイトOZジェミニ
0:20:04.000 7
3 4 19 前川 直典 AE86
0:20:04.000 7
4 6 45 鍋家 武 AE86
0:20:10.000 7
5 7 22 佐藤 浩之 AE86
0:20:14.000 7
6 8 21 久田 悟 AE86
0:20:15.000 7
7 9 38 角田 修治 AE86
0:20:17.000 7
(3) 10 82 小東 明寛 ロイヤルオリエントZZ
0:20:22.000 7
8 11 5 柏谷 健 E-AF
0:20:26.000 7
9 12 97 福永 嘉克 AE86
0:20:27.000 7
10 ? ? ? ?
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(4) 13 5 国沢 光宏 べストカーガイドジェミニ
0:20:32.000 7
11 13 77 中 信雄 AE86
0:20:32.000 7
12 15 11 伊藤 隆明 AE86
0:20:39.000 7
(5) 16 81 緒形 修一 ロイヤルメイトOZジェミニ
0:20:40.000 7
13 17 6 中村 芳政 AE86
0:20:42.000 7
14 18 23 白石 充則 E-AF
0:20:49.000 7
15 18 1 早川 光孝 AE86
0:20:49.000 7
16 20 3 桜森 淳一 AE86
0:21:01.000 7
17 21 66 岡田 清 AE86
0:21:23.000 7
18 22 13 保田 悦雄 TE71
0:21:38.000 7
19 23 58 長島 忠 TE71
0:21:40.000 7
20 24 17 増谷 清博 AE86
0:20:15.000 6
21
10 隅田 吉宏 AE86
0:00:00.000 6
22
18 一柳 勝己 AE86
0:00:00.000 1
23
62 波田 秀喜 AE86
0:00:00.000 0
24
7 山崎 祥史 AE86
0:00:00.000 7

表3:1984年シルバーカップ最終戦結果

全体順位としての完走車で考えると13位/24台であり、確かに国沢氏の下の順位にはAE86が半分くらいいるのだ。つまり彼は全く間違ったことを言っているわけではない

しかし国沢氏はレギュレーション上、AE86のNS1600クラスではなくNS2000クラスで出場している。ここでの順位は5台中4位。スカイラインの平野氏を除くとして、同一車種4台中3位なのである。86を半分食ってるかもしれないが同クラスの中では決して褒められた成績ではないのだ。
ジェミニが「パワーがない」が「足はキッチリ仕上がったので半分喰えた」にもかかわらず、さらに国沢氏よりも上位にジェミニが2台いるのである

客観的に表1のスペックの考察も併せてもらうと、PFジェミニはAE86に比べてとりたてて戦闘力が不足しているわけではなく、むしろ互角(又はそれ以上)に戦えるマシンであったと判断すべきなのではないだろうか。おまけにクラスが違うのである。国沢氏のように、同一クラスでの順位には触れず1クラス下のマシンとの順位を比較するのは何か自己保身の意図があったとしか思えない。ほんの少しのプライドが、客観性を失った文面を作ってしまったのではあるまいか。PF型ジェミニのオーナーに出すメイルであるから、PF型ジェミニの良さについて何か伝えようと思ったはずなのだ。しかし、PF型ジェミニの良さを言おうとしながら無意識的に自分のことを良いように伝えることを優先させてしてしまったのではなかろうか。
この考えだと、現実の事象を極めて偏った側面から見るとこのようになる。

  • (他のPFジェミニとともに)ハチロクと混走した → ライバルはハチロク
  • 自分の順位は全体で真中くらい、同クラスではサッパリ → ハチロクを半分喰うのが精一杯(同クラスに触れず)
  • (PFを褒めなくては、でもヘタと思われるのは嫌) → パワーがないが、足はキッチリ
まさに、「本人の(偏った)観点ではそうかもしれないが客観的には違うだろう」という表現そのものである。このように考えたとすると、上のメイルの文面も納得できるものになるのだ。

もう少し考察してみると、クラス違いの車が混走する、このレースのスターティンググリッドとはどのようなものであったのだろう。上位クラスが下位グリッドであったのか、その逆であったのか、まったく関係なかったのか。もし上位クラスが上位グリッドであったのなら、国沢氏はハチロクを半分喰ったのではなく半分に喰われたことになるのである。まぁこれはちょっと細かいことであるが、この当事のスターティンググリッドがどういう法則であったのかご存知の方がいたら、筆者の個人的興味もあるのでお教え願いたい。

このような自分に都合よいように偏った文章表現は推敲を自分自身でしなくてはならないWEBページには結構ありがちである。細かいことではあるが、各自気をつけられたい。以上の点をふまえると、国沢氏のメイルはこのように書いた方がよかったのではないかと思う。

ジェミニでレースやりましたよ。鈴鹿のシルバーカップです。ハチロクとの混走だったのですが、ほぼ互角に戦えたと思っています。車重的ハンデもありパワーは少々不足気味でしたが、ハンドリングが良かったのが印象的ですね。加えてマシン製作をお願いしたショップのおかげで足が凄くキッチリと仕上がってました。残念ながらデータはありません。作った人が亡くなってしまったもので。
「無意識に自分を良く言ってしまう」表現は常習性を帯びてしまうことがある。読者は、次第にそれがエスカレートして度が過ぎると「ああ、また言い訳してるよ」と嫌になってくる。それは訪問回数の減少に直結するのだ。このような自己欺瞞の積み重ねがWEBページの衰退に繋がる可能性もあるのである。

最後に、国沢氏が2002年8月に出場したカートレースについてのレポートと、その当該レースに出た方の意見を挙げておこう。上のメイルと比べてみるとなかなか興味深いのである。シルバーカップではレギュレーションを無視した表現をしているが、カートではレギュレーションを勝手に細分化した表現をしているのだ。これがどういう意図によるものかは敢えて触れるまでもなかろう。

8月4日 

5時に起きてツインリンクもてぎへ! 8時からフリー走行。ワタシらが乗るカートは、普通のカートレースに使うミッション無しの100cc。直線長いツインリンクもてぎだとミッション付きより直線スピード延びず、100cc以内の『Cクラス』の中で最もラップタイム的に遅い(Cクラスで最も早いのはモトクロッサー用のミッション付き80ccエンジン積むタイプ)。
反面、ポピュラーだし手頃な予算で買えるカートだから、気軽に参加出来るというメリットあります。
それにしてもカートで走るツインリンクもてぎって広い! しっかりブレーキ踏むコーナーは3つ。後はアクセル戻す程度で飛び込んでいける。
後は全開につぐ全開。なれど、直線抜かれまくり。レースの顛末はCTで。
気になる順位は4時間半を経過したトコロでトラブル発生。エンジン交換の大作業となってしまい、75位というトホホの順位。
強いて成果を書くと、
とりあえず4時間終了時点での公式結果は総合37位。Cクラス9位なれどミッション無し車に限れば2位(1位は2分33秒のベストラップを出しているチーム)。モータースポーツに「れば」「たら」はありませんです。ただ凄く楽しかった。(後略)
もてぎのレースに出ていた者ですが、親方の日記を読んで気分が悪くなりました。

あとで車の言い訳をするくらいなら、なぜ言い訳が必要ないカートを選ばないのか?80ccのミッションカートは全国的に下火で、普通の100ccカートを新車で用意するくらいなら程度のいい中古が2台買えます。手持ちのカートで参加するならともかく、新車まで用意したのですから、ルールを知らずに車を用意したか、あとでいいわけをするための逃げ道を用意したとしか思えません。

また、エンジントラブルはかなりのチームで出ていました。エンジントラブル一つで30以上も順位が落ちるなどありえません。交換に手間取るのは無能か準備不足かのどちらかです。

それと親方は、排気量の少ないクラスはルール上、給油に関して有利であることに触れていないのも、ずるい感じがします。チームの戦略と走りで、どのクラスでも上が狙えるルールになっていたことを最初にちゃんと書くべきです。

いいわけを散々したあとに、「レースにタラレバはない」というのは新手のギャグか何かでしょうか?評価にエビカニ満載の親方としてはタラレバも欲しいというミエミエの要求ですか?
(後略)
(以上、いずれも2ch掲示板より引用)

追伸:
1984年にはジェミニだけで行われるジェミニカップも開催されていた。ジェミニでレースに出たいのであれば、こちらの方が純粋にドライバーの腕のみで順位が決まり面白いと思うのだが、なぜこちらに出場しなかったのか?もっとも20年近く前のことなのでもはや詮索はするべきではないのだろうが。

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(0−5版(β版)  2002.8 27)
(1-0版 2002.8.27)
(1-1版 2002.8.30[スペック表訂正&追加])

(※) しかし、耐久でKP61スターレットに負けている。