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● 次の段階へ

しかしこのルシオールもまたハード的には申し分なかったが、普及には至らなかった。清水教授はその件を、ご自身の研究室のページ内で述べていた。
電気自動車普及の将来展望
清水浩(慶應義塾大学環境情報学部)

その中で、細々ながら自動車メーカーの手で軽自動車を改善した電気自動車が開発され、小量の販売が行われていた。その開発のコンセプトは、性能はガソリン自動車に比べて著しく低いが環境に優しいという特徴を生かして、
使えるところで使って行こうという考えであった。しかし、性能の低い電気自動車は、いくら環境に優しくても社会の中では使ってはもらえないという現実が明らかになっただけであった。
  :
私は次世代の電気自動車は、ひょっとしたら車に全く興味のない人の間から出てくるのではないかと思っている…
  :
(http://www.coe.keio.ac.jp/report/html99/HIROS/hiros.html より引用(リンク切れ))
また、これはKAZが発表された遥か後の記事であるが、次期プロジェクトの考えとして、以下の赤太字で書かれているようなことも載っていたのである。
「電気自動車はガソリン車に比べて、まず、走りの性能がよくなければ関心はもたれないでしょう。しかも、排ガスはないので環境にやさしく、燃費もガソリン車の約三分の一です。けれども、それだけではまだ普及するには足りないと思いました」(清水教授)

「KAZ」は、およそ20年もの研究歴をもつ清水教授が開発した電気自動車としては7号目にあたる。 三年前に発表された6号目の「ルシオール」というモデルは、
燃費性能は50km/lで0〜400m加速 が17.9秒と、その性能には遜色はなかったのだが、乗員が二人乗りと車内空間を狭く設定した。結果的に、そのモデルは市場性において時期尚早ということになったのだが、そこで清水教授が決意したのが、新製品の社会認知にむけた戦略として、思いっきり車内空間を広くし、さらに「快適性(乗り心地、居心地のよさ)」を追及してみようというものだった。そして、約四年の開発期間をへて、アルミのシャシー内にリチウム電池80個とコンポーネントを収納し車内スペースを確保、さらにショックアブソーバーのオイルパイプを前後の二輪でつなぎ、乗車時の「快適性」を高めた。また、75馬力のモーターを 8つの車輪に直結させる方式で600馬力を達成、性能的にもスーパーカー並みのパワーを持たせたのが「KAZ」なのである。

「電気自動車は、小型で非力と見られがちですが、この車の技術を生かせば、かなりの重量の荷物を運ぶトラックも十分に可能です。また、電気自動車は安全でスムーズな交通をめざした、自動制御交通システムとも相性がいいのです」(清水教授)

ゆくゆくは自動運転のニューモデルも念頭においているというが、当面は、衝突実験などをへて安全性をさらに確立したうえで、清水教授は「KAZ」の量産体制にむけた計画を進めていきたい、と抱負を語っている。

もともと、東北大学で学位を得てから後、大気汚染の研究を担ってきた清水教授だが、「それだけでは世の中よくならない」と一念発起、子供のときから好きだった自動車が頭に浮かび、それではと20年前から電気自動車の研究に邁進しだした。「やりたいこと、やるべきこと、やっていることが一致するのが、理想の仕事スタイルです」という清水教授だが、まさにその結実として「KAZ」が生まれ出たといっていいだろう。とても、研究のための研究というレベルでは達成できない、時代を牽引するようなインパクトがこの車には満ちている気がする。

「ライバルはフェラーリやベンツですかって?。うーん・・・」

清水教授の表情は、それよりも「KAZ」のほうが優れています、といっている。確かに、ウェットコースの走行テストでは、ある世界的な高級車を超える安定性を見せつけた。性能も抜群で、環境にやさしく、しかも安全性が高いとなると、この電気自動車がブレイクするのは時間の問題といっていいだろう。


研究室探訪 -清水教授- より引用)
以上のことをまとめると、これまでの電機自動車は「所詮、電池の性能には限界がある」という先入観があったので小型の近距離コミューター等としての使用目的ばかり考えられてきた。しかし永年その研究をしていた清水教授は、「それでは一向に普及しない」と痛いほど分かった。そして逆に「これなら十分という性能はどのようなものか」という視点に切り替えたものと思われる。少し意味合いは違うがボトムアップからトップダウンへの発想転換である。そしてたどり着いたのが、大型で強固な車台にたっぷりと電池を積み、8輪の各々にモーターをつけてハイパワーを実現、そして話題性のために、その構造を活かした、内燃機関としての自動車の概念をうちやぶるインパクトのあるデザイン、内燃機関を凌駕する性能を目標としたKAZだった、と考えるのが自然である。

そのKAZの公式ページは、ジュネーブショーを意識したのか英語で作成されている。 当然ながらKAZの公式スペックも書かれているが、比較としてメルセデスベンツのフラッグシップであるマイバッハ62、USAなどでよく見られるストレッチリムジン、トヨタのハイブリッドバス(コースターEV)のスペックも掲載した。

写真:KAZ(ナンバー取得前)
KAZ MB マイバッハ62 グランドリムジンLTD トヨタ コースターEV
寸法 6700mmx1950mmx1675mm 6170mmx1980mmx1573mm 7629mmx1870mmx1540mm 6990mmx1900mmx2580mm
ホイールベース - 3830mm 5372mm 3935mm
重量 2980kg 2800kg程度 2300kg位? 3950kg
回転半径 7.?m 7.4m - -
定員 8名 4〜6名? 6-11名 20名位?
発動機形式 6相同期式 水冷V型12気筒 5513cc
ツインターボ
水冷直列6気筒 4000cc ガソリン1496cc/交流誘導式
最高出力 55kw x 8 (440kW[590ps]) 405kw(550hp)/5250rpm 213ps/4900rpm 36kW[49ps]/70kW
(発電機出力25kW)
最高トルク 100Nm x 8(800Nm[78.5kgm]) 900Nm(91.8kgm)/2300〜2600rpm 37.0kgm/3000rpm 11.3kgm[111Nm]/405N・m
最高速度 300km/h(目標値)311km/h 250km/h(リミッター) - -
1充電走行距離 300km(100km/h定速)目標600km - - -
加速性能 0-400m 14.5秒(目標値)15.3秒 0-100km/h 5.4秒 - -
電池 リチウムイオン電池 - - シール型鉛蓄電池
容量 88Ah - - 58Ah/3HR
電圧 3.75V - - 12V
個数 84 x 2 - - 24
総電圧 315V x 2 - - 288V
価格 500台でMBと同程度
(マイバッハに非ず)
4643万円(右ハンドル) 1450万円〜 1405〜1455万円
(リムジンの諸元は株式会社アイティエスに掲載されているものを用いた
寸法を他の車と比較してみると、「でかすぎる」と言っている方も「ん?」と思うのではないか。マイバッハより少し長いだけ(といっても50cmも違うが)で、マイクロバスと同程度、アメリカでよく見られるストレッチリムジンより遥かに短いのである。ここには書いていないが、リムジンのベースとしてよく使われるリンカーン・タウンカーの全長は5500mmある。

KAZの肝は、言うまでもなく電池と各種装置をすべてフレームに内蔵した車体である。そしてこの技術は清水教授しか使えないと思われる。というのは、清水教授は国立環境研時代、ルシオールにて電気自動車の車体に関する特許を取得しており VIHICLE BODY OF ERECTRIC VIHICLE (電気自動車用の車体))、これは恐らくフレーム内に電池及び必要な制御装置、補機などを全て収める構造に関するものということは想像に難くない。しかもこれは海外の特許までとっている。

それ以外にも清水教授は「エアロゾルによる風向風速測定方法及びそのための装置」「可撓性排気塔」「テッシュペーパー及びその使用ケース(笑)」「構造材」、実用新案として「蛍光ランプ」「飲食用断熱容器」「車輌のヘッドライト構造」なかなか面白い特許を出願している。国立環境研のサイトをご覧になってみられたい。

そしてKAZは、その車体に合せて内装を広く、かつ豪華としてリムジン仕立てとなっていた。これまでの電気自動車の概念を打ち破る目的としては十分な効果が得られたのではないか。また単価がもともと高い車なので、コミューターでは100万円と400万円の差は大きいが、リムジンなどの大型車では例えば1200万円と1500万円程度の差は非常に大きいというわけではない。(錯覚なのだが) そもそも、この大きさを一個人で使おうなどと発想する方が間違いであろう。清水教授は個人用にはちゃんとルシオールやIZAを作っている。そして個人用では普及はまだ時期尚早であるとして発想を転換したとも思われるのだから。

またKAZのページのDESIGN CONCEPT AND FUTUREを見ると、このKAZのコンポーネントの応用としてバス、トラックなどにも流用でき、また駆動装置のみ使ってシリーズハイブリッド、燃料電池なども使えるとも書いてある。確かにこの構造ならそのようなことも容易だろう。ここから理解できるのは、清水教授はまずは300km/hという話題でインパクトを与えて興味を引き、そしてKAZの技術(インホイールモーター、ビルトインフレームによる低床とアレンジの容易さ)をアピールして派生車をどんどん生み出そう、としていたのではないかと思われる。(後日の週間プレイボーイ誌にこの通りのことを言った清水教授の談話が掲載された)KAZのシャーシは厚さ100mm程度であるが、この中に電池、制御装置が全て収まっている。 かつこのシャーシは300km/hに耐える強固なものである。これを使えば低床バスも可能であろう。マイクロバス程度の大きさとゼロエミッション、静音を活かせば、市街用コミューターバス、幼稚園送迎バスなどにうってつけである。将来、都市部の交通量緩和のためにパーク&ライド方式が採用された場合、都心部用のコミュニティーバスとしての利用も考えられる。市街地用の宅配トラックという手もあるだろう。残されているのはこの構造をどう使うか、という柔軟な発想ではないだろうか。それと、値段だが・・・(笑)。

「ベースは研究し、それをどこで使うかのアイデアは後からついてくる」という事例で筆者が面白いと思うのは東京工業大学の蛇ロボットの研究である。最初、多関節系の制御の研究として蛇を飼おうとしたが、最初は「工学部で蛇の餌の予算などとれない!」と却下された。しかし何とか蛇の研究を進め、論文を発表したらメーカーなどから「林立したパイプ内などの点検・整備に利用する多関節冗長制御系マニュピレーターに使えないか」などの意見が出たらしい。




以上まではKAZがジュネーブショーで発表された直後に、Internet上に既にあった情報である。ここまでを見ると、清水教授は自身が20年にわたって研究してきたそれなりの考えと実績を基にKAZを作った。一時の思い付きや酔狂で作ったものとは到底思えないのだ。そして目標値もただの夢のような目標などではなく、きわめて現実味があるだろうことは清水教授の実績を考慮すると分かるだろう。もちろんKAZを批判する人もいるだろうが、それは以上までのことを調べて、清水教授の考えと実績(特許取得数なども含め)をふまえた上で批判すべきであろう。

ここでいま一度国沢氏の発言をふりかえると、「電機自動車は移動距離が10km程度のコミューターとするのが正しい方向」と断言している。しかし、清水教授はコンバートEVの元祖であり、コミューターの開発は既に終え、別の用途に向けた研究をされているのである。
つまり国沢氏は清水氏が切り開き、地道に育ててきた道を後から辿って「正道」と言い、全く別の観点で新たに藪に分け入り、道を切り開こうとしていることを「邪道」としているのだ。知らなかったとはいえ、なんとも恥ずかしい批評をしてしまったものだ。


これで終われば「国沢氏は清水教授を知らなかったんだね」ですんだかもしれない。しかしそうはならなかったのである。
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