ユーザー以外に歓迎されないトラヴィック  

−それは日本GMのイジメのせい!?−
2003年6月、トラヴィックの売上は依然として厳しい状況である。2ヶ月連続で前年比40%を割り込んでおり、目標販売台数の3割にも達していない。 この現状を憂いてか(!?)、国沢氏はベストカーにおいて「トラヴィックほど不幸な車はない」という内容の記事を書いた。しかしそれはトラヴィックの不振原因を全て日本GMのせいにしようとせんがための、偏見にあふれた記事としか思えないのである。

以下はベストカー誌2003年7月26日号 117ページ「クルマの達人になる」からの引用である。

● トラヴィックほど冷や飯食わされてるクルマはない

クルマの達人になる VOL.148
日本にある外車購入の弊害は改善すべき


トラヴィックというミニバンに乗っている。妙に「ハマる」クルマで、過去ワタシが買ったなかじゃ間違いなくベスト5に入るほど気に入っています。しかし!トラヴィックほど「冷や飯食い」を強いられているクルマはないんじゃなかろうか。ユーザー以外、どこからも歓迎されていないのだ。(ワタシを含めユーザーの満足度はメチャクチャ高い)日本で外国生まれのクルマを売る難しさの縮図みたいなものか。

”トラヴィックいじめ”の第一歩は価格設定にあったと思う。スバルは「国産車と同じでないと売れない」と主張。そいつにGMジャパンが大反発したらしい。そりゃそうだ。トラヴィックと同じクルマであるザフィーラを289万円で売っていたのだから。トラヴィックを安くしたら
「輸入車の価格設定に正当化なし」という証明になる。
いっぽう、GM本社はスバルの意見を重視。200万円を切る設定とした。これでGMジャパンは切れたらしい。スバルに対し徹底的な干渉を行い始めた、ように思う。

(ベストカー誌 2003年7月26日号 117ページより引用 (以下※とする))
この時点で既に恣意的に読者をある方向に誘導している。

もし読者諸氏に時間があれば、少し各国のZafiraの価格を検索してみて欲しい。まずは本家、オペルのサイトを見てみると、ドイツ語なのでわけがわからないかもしれないが、概要は何となく理解できるだろう。ここからZafiraを選択し、preisliste を選ぶと、pdf形式のプライスリストが開く。
やはりドイツ語であるが、ユーロでの価格が掲載されている。ベーシックグレードの1600ccでも本体16,375ユーロ。2003年7月現在の為替レートの1ユーロ=135円を適用すると、なんと221万円となる。日本に輸入されヤナセで扱っていたザフィーラ1.8CDXと同等装備の1800ccのエレガンスは、本体20,168ユーロであるから270万円。そして、2200ccのベースグレード(トラヴィックでいえば199万円のCパッケージ)も本国では247万円になる。

ヤナセのザフィーラの場合、本国で270万円の車を輸入して日本で289万円で売っていたのだから、関税(※)その他も考えればこの価格は
良心的どころか破格のバーゲンプライスであろう。これ以上安くしたら、かえってダンピングとして提訴される可能性がある。( ※ 筆者注: これは筆者の勘違いで、輸入車関税は1978年に撤廃されていた。お詫びして訂正する。)

しかし、この価格では日本では競争力が弱いというスバルの主張も確かである。しかしザフィーラの名前で安くするには都合が悪い。双方を満たすための回避策は、労働力が安価な地域で生産されたザフィーラをOEMということにして売る方法であろう。 トラヴィックという車が成立したのはこういう経緯があったのではあるまいか?

ちなみに、オーストラリアではタイ生産のホールデン・ザフィーラの2.2Lのオートマチック車は34,690豪州ドルで売られている。1豪州ドルは80円くらいなので、
約280万円である。これだけでもトラヴィックの破格値が分かるだろう。
ただ、OEMなので各種の弊害が生じるのは致しかたないところで、それは後述する。


日本GMが反発したという事象については、国沢氏はソースを何も示さずに「〜らしい」としか書いていないので、信用に値しない。この場合は最低でも「スバル関係車談」とか「事情通談」など書くのが普通である。 そして「日本GMが切れた」「干渉を行うようになった」というのも、これまたソースのない推測形式の表現であるが、それらの根拠は続いて書かれている事象のようである。では、日本GMの徹底的な干渉、と自動車評論家である国沢氏が指摘しているものが、本当に「過度の干渉」なのかどうかを、一般人の視点で検証してみることにする。

● ナビは純正しかダメです
ナビゲーションシステム:

日本GMが「電子制御スロットルを採用しているので妙な配線をしたら責任とれない」とスバル(ディーラー?)に圧力をかけ、純正の50万円のものしかつけられなかった。純正ナビも車速センサ使ってると言ったら「マッチング試験をやってないから暴走しても保証できない」。これらの意見を無視してパイオニアの楽ナビを装着。何ら問題なし。今は色々なメーカーのものが使われている。


(※より要約)
これはメーカーの事情を考えれば、「指示」であって、「徹底的な干渉」とは言えないと思われる。

トラヴィックはオーディオスペースが1DINサイズしかない。(2003年モデルでは2DINになるらしい?)加えてマルチインフォメーションディスプレイや手元オーディオスイッチなど、オーディオ機器と車側との連係がされている。この純正オーディオはPanasonic製である。そして輸入されるオペル車のオーディオもPanasonic製で、オプションのナビゲーションシステムもそうである。

大半の方はあまり気にしない点であろうが、実はオペルのエアバッグはかなり大きい。
特に助手席側も以前より「フルサイズ」を唄っていた。これは当然、安全性を重視しているためである。
ここで問題がある。もし仮にダッシュボード中央にナビ用のモニタをつけ、事故を起こした場合、助手席エアバッグが開いてモニタに接触し、モニタが超スピードで乗員側に飛んで来る可能性があるのだ。そうでなくとも多くの方がやっている両面テープのみでのモニタ固定では、メーカーとしては安全性に問題があるのでつけられない(といってタッピングネジ留めはユーザーが嫌う)。エアコン吹き出し口取り付け型など論外であろう。

そしてトラヴィックの場合、オーディオスペースには1DINしかないのだから1DIN格納型モニタをつけたらオーディオがつかないことになる。これを解決する製品は、当時のPanasonicとしては、MDデッキチューナーアンプ付きのユニット(CQ-VA909WMD:定価210,000円。当時もこれであったかどうかは不明)を1DINに入れ、グローブボックスやシート下にナビ本体をつける、という方法しかなかったのである。又は、オーディオコントロールシステム内蔵の1DINモニタ+床下アンプ+CD/MDチェンジャー+ナビという方法もあるかとは思うがこれでは50万円を遥かに超える。

他のメーカーの安価なダッシュボード貼りつけ型のものは、上記の理由でメーカーとしては*公式には*あまり認めたくないのは明らかであろう。
またPanasonicのようなモニタ内蔵1DINデッキが他メーカーにあったとしても、今度は純正のオーディオとの結線に変換コネクタなどが必要である。 そして動作確認をして、かつ取り付けマニュアルを作成し、全ディーラーの整備工場に配布しなくてはならない。
(今でこそインダッシュTV付きCDセンターユニットなどは各社から出てきているが(例:ADDZEST VRX825、ALPINE AVA-D900J? など) 、トラヴィック発表当時はPanasonicのユニットが唯一のものに近かった、と筆者は記憶している。間違っていたら訂正して欲しい)

海外企業の日本法人について多少なりとも知っている方ならお分かりだろうが、まさにピンキリで、人員も豊富で独自基軸を打ちたて、開発・生産設備も豊富なところ(例:日本IBM)から、海外の本社の意向が重視され、あまり自由度のないところもある。このあたりはまともに取材しなければ分からない(取材しても教えてくれないこともある)ので筆者には推測しかできないが、日本GMは恐らく後者に近いのではあるまいか。

またここで逆に考えれば分かると思うが、中国に輸出した車に、中国法人が「中国製のナビをつけて保証付きで販売させてくれ」と言ってきたら、「こちらは責任とれないのでそっちで独自に保証づけをやってくれ」と言いたくなるだろう。 日本GMもそのような「保証をするために検証をしなくてはならない立場」にあったはずである。

そうなると、恐らく日本GM本体には独自の開発(技術)組織というものの規模が小さいので、検証を行うためのリソース(人員・時間)が少なかったのではあるまいか。最近どのメーカーもOKになってきたというのは、ナビの日本GMでの検証がとれてきたため、とも考えられるのである。

更に言えば、そもそもメーカーで確認できていないものは、メーカーとしては「保証外で責任はとれない」と主張するのは当然である。たとえ接続不良で不具合が出ても「つけてもOKとメーカーが言ったではないか」と言われ、訴訟される可能性がある。
なにしろ米国は訴訟社会であるから、米国の日本法人は何でも軽々しく「大丈夫です」とか「問題ありません」などという返答はしないのだ。このような文化の違いも理解しないと、日本GMの主張も一見「石頭」とか「いじめ」に映ることになる。

もし保証が欲しいなら、トラヴィックにも装着可能かどうかナビゲーションシステム製造メーカー確認してみればよいのである。ニーズが多ければそちらが調査するであろう。又は検証がとれている純正のPanasonic製と同等品を安く購入して付けるとかの選択枝もあろう。

更に車速をとらずに精度をあげる方法として、Panasonicには簡易ジャイロがついたポータブルタイプのナビもあるし(これでも精度はそこそこ良い)、Pioneerにはパルス発生装置オプションもあるので、車速をとれないからといってナビをあきらめることはない。筆者は以前ジャイロ無しのタイプのナビを使っていたが、GPS精度が10倍にあがったので、ナビにだけ頼るような運転をしていない筆者にとっては、これだけで十分実用に耐えていた。

というわけで、この件に関しては日本GMは慎重ではあったかな、とは思うが、「日本GMの徹底的干渉」と表現するのは、ちょっとオーバーすぎるのではないかと感じる。

ちなみにトラヴィックだけではなく、他の輸入車も基本的には純正のナビしかつけられない、と思うのだが?純正以外のナビをつけるには、自分で買ってディーラーに持ちこんで懇意のセールスに頼めばどうにかなるけれども・・・。これは筆者の外車購入経験の一例からの推察にすぎないので、もし純正ナビ以外でもディーラーで自由に取り付けている輸入車があったら教えて欲しい。
オイル:

オペル純正の1L 1800円のオイルの使用をディーラーとユーザーに守らせた。純正以外は保証しないと言いはった。最近はスバル純正でもよくなってきた。

(※より要約)
これも少し考えればあたりまえのことではあるまいか。 全国に何ヶ所あるか分からないスバル整備工場に指示しなくてはならないのだから、 最初は安全策として、純正オイルを厳命するのはメーカーとして当然である。 それと、ユーザーに守らせたというのも、これは推測だがマニュアルに 「オイルはメーカー指定の純正オイルをご使用ください」 と書いてあっただけなのではないだろうか?これくらいどこのメーカーでも書いてあることなのだが・・・


● トラヴィックにはチャイルドシートは安全につけられない
もっと深刻なのがチャイルドシートだ。オペルは「オペルフィックス」というタイプを独自開発。その代わり、セカンドシートのシートベルトはチャイルドシート固定機能を付けなかった。トラヴィックにもアタッチメントがついており、簡単に装着可能。なのにGM側はスバルに使用も販売も許さず、かくしてチャイルドシートを安全に装着できない、という状況になってしまう。

(※より引用)
これも非常に問題がある文章である。 以下は筆者が知る限りの情報である。

オペルは1990年代後半に[OPELFIX]というチャイルドシート固定装置を独自に開発した。これは車体側にボルト留めされたアンカーベルトと他方の先についたコネクタ、そのコネクタにつけるチャイルドシート本体から成り、構造としてはISOFIXとよく似ている。チャイルドシートは乳児からジュニアまで使え、価格も比較的安価(確か50,000円以下)であった。しかもこのOPELFIXはメーカーで前面衝突・側面衝突・追突試験はおろか横転試験までしているという安全性にも優れたものだ。

しかしこのOPELFIXはISOFIXとのコネクタの互換性はないまたOPELFIX-ISOFIX用のアタッチメントも別途用意していない。オペル車はこのOPELFIXの車体側のアンカーを2列目の左右、(車によっては前席助手席側−トランスポンダ付)に設置、または設置可能であった。トラヴィックも当然同じである。

ただ、
現在ではOPELは独自の規格をやめISOFIX式に移行しつつある。2003年式の本国のザフィーラはISOFIXアンカーを2列目に装備している。

ところで、ISOFIXの規定ではアンカーしか決めていなくて、シートとの固定の詳細まで規定してはいなかったため(そのため各社は独自にテザーアンカーや沈み込み防止バーを用意している)、同じISOFIXのチャイルドシートでは全てつけられるというわけではない。現在のISOFIXチャイルドシートは、どの車種にどのシートがつくか、などのメーカーが指定されている(Specific Vehicle)。これを解決するためにどの車でも使えるというユニバーサル規格のISOFIXがあるのだが(Universal Approval)、後者が出回るまでは、ISOFIXならどの車にもそんなシートでもつくというわけではない。

ただ、ISOFIX対応シートであっても、ISOFIXアンカー無し車でも取り付けられるよう工夫されているものも多いため、ISOFIXシートを購入してすぐに車を買い換えたり、他の車で使いたい場合、アンカーがなかったり形状が合わなくても無駄にはならないこともある。(安全性や利便性は多少劣るのは仕方がないが)これはOPELFIXでも同様であるが、この件はどの自動車評論家もあまり言及していないので、ここをご覧になられた方は覚えておいても損ではないだろう。

そして恐らくここでは、国沢氏は「トラヴィックの2列目シートにはALR(自動巻取りロック装置−チャイルドシート固定機能付と言われることもある)がついていない」ということを言っていると思われるのだが、(参照:チャイルドシートの正しい取り付けについて)、このALR機能は
ロッキングクリップ(H型をした留め具)を使用しての装着をするチャイルドシートが多い米国・日本の車には早くからつけられているが、欧州の車にはそもそもあまりついていないようである(参考:チャイルドシート用語辞典) 実際、ヤナセのレーマーの車種適合表を見ると、ザフィーラはもちろんのこと、欧州車はALRがついていないものが多い。これはチャイルドシートの規格の問題であるので、ALR付きだから優れている、というものでもないと思われる。

このことだけでも、国沢氏は「他の欧州車もALR無しの車が多い」ことに言及せず、トラヴィックだけにALRが無いかのように
、「自分の主張に都合のいいような表現をして読者を誘導しようとしている」ことがはっきりと分かるのである。

ちなみに欧州のチャイルドシートはどういう構造なのかといえば、上述のレーマーの例を挙げる。「ベビーセーフ」の装着方法の動画が掲載されているのでご覧いただきたい。ベース部を開き、ベルトをロックする方式をとっている。「プリンス」は、テーブルを兼ねたサポート部にシートベルトを通して子供と一緒に固定するだけの簡単装着式である。それ以上のズーム&コンフィもテーブルがなくなるだけでほぼ同様である。「キングクイックフィックス」は、シートのベースを固定する際にベルトをロックして取り付けるような構造になっている。これもベースにクリップがついている。つまりロッキングクリップを使わずに、ALR無し車でも簡単・確実につけられるような構造になっているのである。安全試験をしても問題がないことは言うまでもない。
これらのことより、欧州車を買ったら、チャイルドシートも欧州製を選んだほうがいいというなんとも当たり前の結論になってしまいかねないのだが…。


ところでOPELFIXは、名前の通りオペルブランドのチャイルドシートシステムである。もしスバルで「ザフィーラ」を売っていたら、このシステムの販売にはまるで支障はないはずだ。しかし、
スバルで販売していたのはOEMであるトラヴィックなのだ。
このため、スバルで「OPELFIX」を売ることが難しいことは企業に勤めている人ならよく分かるはずだ。もしスバルでOPELFIXを売る場合、オペルとスバルとの間に代理店契約なりを締結する必要がある。しかしせっかくOEMの契約をしながら、OPELFIXのみを別契約とするのは本末転倒である。 というわけでこれは常識的に考えれば
OEMという制度によって生じてしまった弊害?の1つで、GMのいじめでも何でもない

そして勢いあまって、表現が過激になりすぎている。

かくしてチャイルドシートを安全に装着できない、という状況になってしまう。

これではまるでISOFIXやALR付きベルト以外は危険だと言っているようなものではないか。ALR無しの場合は、国産のチャイルドシートの場合はチャイルドシートのロッキングが面倒(かつきちんと固定されない場合がある)というだけの問題にすぎないのではないか?ユーザーが注意すれば避けられる問題である。
自分はチャイルドシートをつけていないからどうでもいいのかもしれないが、これでは読者に誤解を招き、トラヴィックを購入しようと考えていた子持ちの方もトラヴィックを考え直しかねない。チャイルドシートメーカーにとってもスバルにとっても非常にまずい。

それにそもそも国沢氏は「チャイルドシートは助手席に」派ではなかったのだろうか。調べたわけではないが、助手席にALRをつけている車種など少ないのではないか?(プリテンショナー&フォースリミッタはあるかと思うが、当然ALRの代わりにはならない)。
それで「ALRがないからチャイルドシートが安全につかない」というのはどうも矛盾しているように感じるが…。
まだある。当コラムで「ウィンカーと一体になったスイッチ部分さえ付ければ簡単にクルーズコントロールが付く」と紹介した。ディーラーに問い合せた人もいるのだろう。するとナビの時と同じく「危険だから保証しない。部品も売らない」。タイの工場で繋ぐカプラーを日本で繋ぐだけなのに。ニーズがあるならディーラーオプションとすればいいと思う。

(※より引用)
これは6-10節で述べたので考察自体は割愛するが、雑誌にもこのような見解を堂々と掲載するとは、筆者にはちょっとした驚きである。 しかし、クルコン用レバーを販売しないと決めたのはスバルではなく日本GMの意向なのであろうか?そのような根拠などどこにも示されていないのだが・・・。

この件は、もし筆者がスバルの責任者であれば、日本GMに聞くまでもなく販売しないと決定を下す内容であるが?
明るい見通しも出てきた。先日「親なのに子をイジめてた」GMジャパンが大幅なリストラ策を表明。反発的な意見も減少しつつある。これでスバルもトラヴィックを可愛がれるようになるかも。ちなみにオペル本社の開発担当者は「ザフィーラでもトラヴィックでも、オペルのクルマが日本のお客さんに評価してもらえれば嬉しいですね」作る側と売る側の間に変な口を挟むべきではないです。

(※より引用)
細かいことだが、「反発的意見」の主語がない。もし主語が日本GMであればここは「高圧的指示」とか「過度の干渉」となるはずである。主語がスバルであれば「日本GMの口出しが減ったから?」ということになる・・・が、そこまで話が飛ぶのは無理があるような気がしないでもない。

結局、国沢氏は「GMにいじめられたせいで、スバルはトラヴィックに愛情を注げず、そのために販売にも熱心さがなかったので不振なのだ」という主張をしているようにしか見えない。それではスバルディーラーの末端セールスがトラヴィックに愛情がなくても、それもGMのいじめのせいだったというのであろうか?あまりに飛躍した理論で、もはや唖然としてしまう。

日本GMは日本法人に固有の慎重姿勢・純正指向姿勢は垣間見られるが、特に過度のいじめをやっているような事例は筆者にはみうけられない。 筆者が仕事で関連している某米国の日本法人の業者イジメなどもっとえげつない(苦笑)。当然ここに書くようなことではないのだが。


● 裏付け取材は?

この記事における最大の問題は、当事者の日本GMに取材した形跡が全く無いことである。本当にそのような干渉をしたのか、その真の理由は、などについての責任者の声がない。もし公正な記事を心がけるのであれば、仮にユーザの視点で記事を書いていたとしても、国沢氏がユーザとメーカを繋ぐ代表者と自負しているならば、日本GMに取材はしなければならないことではないか。

国沢氏もこの件に関しては実際ちゃんと取材したのかもしれない。しかし、記事において肝心なところは「〜らしい」「〜ように思う」「〜かも」などの推測だけであり、その根拠は少し考えれば「そのような処置は最初は仕方が無いのでは」と思うようなもので、かつ一般のユーザでも気がつくような身近な内容ばかりである。そしてこの推測の根拠は、スバル側からの情報(及び情報リーク)ではないかと思われるものばかりなのである。

「最初はナビもオイルも純正以外はダメで、最近はよくなってきたのは何故か」といった、「検証の結果問題なかったからです」などの無難な回答例がいくつも予想される内容ですら、日本GMに尋ねたらしき形跡が記事からはみられないのである。

これでは、
飲み屋で親会社(GM)の愚痴を言う、買収された子会社(スバル)のうだつの上がらぬ平社員が書いたような記事でしかない。建設的意見も何も無く、現状に文句を言い、親会社でリストラをしたら「ざまーみろ」と言っているに等しいのだから。
WEBページなら多少の取材不足でも許されるかもしれないが、ちゃんと原稿料をもらっている雑誌の記事なのだから、もっと根拠を明確に示していただきたいものである(無料ならいいかげんでもいいというわけではないが)。

● しかし…

と、こう書いても、国沢氏は「マスコミの基本理念たる情報源の秘匿」を錦の御旗にして、「取材したがソースは明かせない」「日本GMが自分達に都合が悪いことを言う訳がないので取材など無意味」などと主張するだけであろうことはもはやほとんどの黄昏野郎には容易に予想されてしまうことである。更には「苦情は掲載したベストカーに言うのが筋」として、自分への意見の矛先をかわすためのあらゆる工作を惜しまないだろう。この節での上記の意見が無駄なことは分かりきっている。

しかし、この記事から得る教訓としては、読者としては(国沢氏の記事に限ったことではないが)恣意的文章に惑わされないよう、せめて真偽を見極める力をつけるしかないということであろうか。特に活字になったら、「校正も入る誌面に嘘は書くわけがない」という先入観も入るので注意が必要であろう。

・・・もっとも車雑誌の東スポとも揶揄されるベストカーに書かれたことを信じるのが(略)という意見もあるかもしれないが。
第6章TOPへ
2003.07.07 β版
2003.08.28 1-0版